一級建築士試験、資格学校は通うべき? か独学か?

建築業界で10年以上キャリアを積み、一級建築士として活動している筆者です。今日は多くの方から質問される「一級建築士の受験勉強、資格学校に通うべきか」について、経験者の視点から本音で徹底的に解説していきます。

難関資格・一級建築士試験の実態

一級建築士試験は建築系資格の最高峰と言われ、毎年合格率は10程度の難関試験です。学科試験(五教科)と製図試験の2段階方式で行われ、学科に合格してはじめて製図試験にチャレンジできるシステムになっています。

学科試験は計画、環境・設備、法規、構造、施工の5分野から出題され、幅広い知識が求められます。製図試験は限られた時間内に課題に沿った建築物の設計図を作成するもので、実務的な応用力や表現力が問われます。

こう言ってしまうと身も蓋もありませんが、資格学校に通うべきか?独学か? それは人によります。

資格学校に通うべきかどうかは「その人の状況による」というのが正直なところです。合格者の中には完全独学で突破した人もいれば、資格学校をフル活用した人もいます。

私自身は、資格学校に通いたかったのですが当時お金がなくて独学を選びました。まわりの友人たちが通っているのをうらやましく思ったことが思い出されます。

そして独学で合格した経験と、友人たちから聞いた話、先輩や後輩たちから聞いた話を総合して導いたのが「学科は半独学、製図は学校活用」というハイブリッド方式です。資格学校、独学それぞれのメリット・デメリットを補う形になっておりお勧めしたい方法です。

ハイブリッド方式を採用するにおいての、資格学校、独学のメリット、デメリットを書いていきます。

資格学校のメリット

1. 体系的なカリキュラムでムダなく学べる

資格学校の最大のメリットは、試験に必要な範囲を効率よく学べること。一級建築士試験の範囲は膨大ですが、学校のカリキュラムは「試験に出る可能性が高い内容」に焦点を当てています。

特に独学だと、「どこまで勉強すればいいのか」という線引きが難しく、過剰に勉強してしまったり、逆に重要な部分を見落としたりするリスクがあります。学校のテキストは試験対策に特化しているため、効率的に学習できます。

2. プロの講師による的確な指導

建築の各分野には、それぞれ専門のプロフェッショナルが講師として教えてくれます。構造計算の考え方や環境工学の複雑な計算なども、専門家の解説を聞くことでスムーズに理解できることが多いです。

また、「この分野は毎年こういう角度から出題される」「この公式は覚えておくべき」といった試験のコツも教えてもらえます。

3. 学習ペースが維持できる

独学の最大の敵は「モチベーション維持」です。仕事をしながらの勉強は想像以上に大変で、疲れて帰宅した後に自分を追い込むのは至難の業。

資格学校に通うと授業スケジュールや課題提出のデッドラインがあるため、否応なく勉強ペースを維持できます。また、同じ目標を持つ仲間がいることで、良い意味での競争意識も生まれます。

4. 質問できる環境がある

独学していると、わからない部分でつまずいたときに相談できる相手がいないのが辛いところ。資格学校なら講師に質問できますし、学習仲間とも情報交換できます。

特に、製図試験の採点基準は曖昧な部分もあるため、経験豊富な講師からのフィードバックは非常に価値があります。

5. 模擬試験や過去問対策が充実

多くの資格学校では、本番さながらの模擬試験を実施しています。時間制限のある中で実力を試す経験は、本番での精神的余裕につながります。

また、過去問の解説も詳しく行ってくれるため、出題傾向や解答のポイントを効率よく学べます。製図試験については、添削指導を受けられるのも大きなメリットです。

資格学校のデメリット

1. 費用がかかる

資格学校の最大のデメリットは費用です。学科・製図の総合コースだとかなり高額になることも珍しくありません。独学であれば参考書代数万円程度で済むことを考えると、経済的負担は大きいです。

とはいえ、効率よく合格できるなら、長期的に見れば仕事の機会損失を考えると投資対効果は十分にあると言えます。

2. 通学の時間的負担

平日夜間や週末に通学する必要があるため、仕事や家庭との両立が大変です。特に地方在住の方は、通学可能な学校が限られる場合もあります。

最近ではオンライン講座も充実してきているため、通学の負担なく質の高い授業を受けられる選択肢も増えています。

3. 学校のペースに合わせる必要がある

自分のペースで学習したい人にとっては、決められたスケジュールで進む学校のカリキュラムがストレスになることも。得意分野はサクサク進めたいのに、クラスのペースで足踏みしなければならない場面もあります。

独学のメリット

費用を抑えられる: 参考書と過去問題集だけで数万円程度

自分のペースで学習できる: 得意分野は早く、苦手分野はじっくり

時間や場所に縛られない: 通勤時間や休憩時間など隙間時間を活用できる

自分に合った教材を選べる: 理解しやすい解説スタイルの本を選択できる

独学のデメリット

モチベーション維持が難しい: 自己管理能力が問われる

質問できる相手がいない: わからない部分で立ち止まりがち

効率的な学習順序がわかりにくい: 何から手をつければいいか迷う

製図試験対策が難しい: 添削を受けられないため自己流になりがち

以上のメリットデメリットから私が導き出した「ハイブリッド方式」を勧めます。

私自身は、当時お金がなくて、資格学校に通う事が出来なかったのですが、周りの人間からの情報や自分の経験等を総合していくと、最も効率が良いと感じるのは「学科は基本独学+弱点分野だけ講座受講」「製図は学校活用」というハイブリッド方式です。

学科試験対策

学科試験の各分野は、自分の職務経験や大学での専攻によって得意・不得意がはっきり分かれることが多いです。私の場合、設計事務所勤務だったため計画や法規は得意でしたが、構造や設備は苦手でした。

基本的な部分は市販の参考書と過去問で対策し、苦手な構造計算などは資格学校のスポット講座を受講しました。全科目をフルコースで受けるより費用も抑えられますし、自分のペースで勉強できる部分は自分で進められます。

参考書選びのコツは、「過去問題集」「分野別対策本」「用語集」をバランスよく組み合わせることです。特に過去問は10年分くらい解いておくと、出題傾向がつかめます。

ただし、お金に余裕があるなら、学科試験から資格学校に通うことをお勧めします。

製図試験対策

一方、製図試験は資格学校の活用をお勧めします。独学では難しい点が多いためです。

独学ではかなり合格することは厳しいと思います。

採点基準の理解: 製図試験は「何を書けば点数がもらえるか」という採点基準を理解することが重要ですが、独学ではその感覚をつかみにくいので、添削指導で 自分の図面の良い点・悪い点を客観的に指摘してもらえたり、限られた時間内で図面を完成させる時間配分のコツをやテクニックを学べるからです。

また、普段図面をあまり書かない方もトレース練習や 基本的な図面表現や記号の書き方を学ぶ事が出来ます。

私は製図試験対策で資格学校に通い、講師の添削を受けるたびに確実にレベルアップしていくのを実感できました。

資格学校選びのポイント

資格学校に通うと決めた場合、以下のポイントを確認しておくと良いでしょう。

合格実績: 単純な合格者数だけでなく合格率も確認する

講師陣: 実務経験が豊富な講師がいるか

カリキュラム: 自分の予定に合った受講スタイルがあるか

サポート体制: 質問対応や補講の有無

教材の質: 可能なら事前に見せてもらう

口コミ評判: 実際に通った人の声を集める

無料説明会や体験講座を利用して、自分に合った学校を選ぶことをおすすめします。

最後に、どのような人にどんな学習法が向いているか、簡単にまとめておきます。

【資格学校フル活用型が向いている人】

自己管理が苦手で強制力が欲しい人

効率よく短期合格を目指したい人

質問できる環境が欲しい人

費用よりも時間を優先したい人

【完全独学型が向いている人】

自己管理能力が高い人

建築実務経験が豊富な人

予算を抑えたい人

マイペースで学習したい人

【ハイブリッド型が向いている人】

得意・不得意がはっきりしている人

効率と費用のバランスを取りたい人

製図に不安がある人

オンライン講座と独学を組み合わせたい人

一級建築士試験の学習法に絶対的な正解はありません。自分の状況、性格、予算を考慮して最適な方法を選ぶ、自分に合った学習スタイルを見つけることが大切です。

私のおすすめは、まず市販の参考書で全体像をつかみ、独学で対応できそうな部分とサポートが必要な部分を見極めること。そのうえで資格学校の説明会に足を運び、提供されているサービスと自分のニーズを照らし合わせてみてください。

「資格学校か独学か」という二択ではなく、両方の良いとこ取りをするハイブリッドアプローチが、多くの人にとって効率的な選択になるでしょう。

次回は、資格学校に通う場合、どこの資格学校に通うべきかの参考になる、一級建築士受験|4大資格学校徹底比較ガイドを書いていきます。

最後に、一級建築士試験は難関ですが、計画的に取り組めば必ず突破できます。この記事が皆さんの学習計画の参考になれば幸いです。

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